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もう封切りから2か月が経過し、上映館も限られてしまいました。

そんな映画「ホットロード」鑑賞した後に原作を改めて読んでみた感想です。

もちろん、映画も鑑賞しにいきましたし、鑑賞前にというより29年前に原作を読んでいたのであらすじも判っていました。

再び原作に触れてみて感じたのは、時代を経てもなお色あせないテーマが存在するということでした。
思春期の若者のやり場のない怒りともいえるエネルギーと同居する虚無感と孤独感。

紡木たく作品では家庭環境に問題のある少年少女が描かれることが多く、いつの時代にも身近な問題で、自分自身にも投影される問題と感じていました。

わたし自身も母子家庭の複雑な家庭環境に育ち、高校生の時はオートバイに乗っている時だけ、いやな現実を忘れることが出来ました。

暴走族にこそ入りませんでしたが、アクセルを全開にしてスピードに身をゆだねている時は「死んだって構いやしない」と心の中で呟いていました。

その後もそのような思いが心の隅に有ったように思います。

いつも”ポッカリ”と心に穴の開いたような虚無感と、どこにも自分の居場所の無さを感じていました。

好きになるのは、やはり家庭に問題があり、居場所をなくしたって感じの、いつも同じような境遇の相手でした。

初めて原作「ホットロード」を読んだときは、”自分たちのこと”を描いていると感じたのです。



映画に話を転じますが、そんな「ホットロード」が映画化されたと知り、なぜか気持ちがザワザワしました。

封切りの日は自分の誕生日でしたが、見に行ったのは3日後でした。

誕生日に予定があり、見に行けなかった訳ではありません。

見に行くべきかを悩んだのです。

なぜなら、いまだに”あの時の思い”を抱いたまま歳を重ねてしまっていたからです。

そんな自分が観るべき映画かどうかを悩んでいたのです。

「娯楽映画」として観ることが出来ないと・・・

意を決して観に行くことにしました。


自分にも、あの時から続いている思いにも向き合うつもりで・・・



映画館に行って驚いたのは、中高生から自分と同年代のご婦人まで幅広い層の観客が居た事です。

少しほっとしてチケットを買いました。

早く照明を落としてくれないかなと思いながら座席に身を沈めました。

オープニングは江の島を俯瞰する映像と尾崎の”マイ・リトルガール”で、いきなりハートを掴まれたって感じです。

・・・・・・・

案の定、 エンドロールが終わって明るくなった時、目と鼻が真っ赤になっていました。

原作も映画もご存じない方のために説明しますが、単なる暴走族映画ではありません。


春山と和希はあなた自身なのです。

どぎついラブシーンもか必要以上にか過激な暴力シーンもありません。

「ホットロード」の世界観は、とても透明感ある描写で描かれているのが特徴です。



原作と多少の解釈のずれも無いとは言えませんが、良くできた映画であることは間違いがありません。

それは、何と言っても観客動員数と興行収益が物語っているのではないでしょうか?

オススメの映画であることは間違いないでしょう。

先に原作を読めなんてことは言いません。

映画は映画で充分成り立っています。

でも、気が向いたら「原作」も読んでくだされば幸いです。